神奈川県みらい未病コホート研究の成果
論文発表
ヘルスケアロボットHALを活用した介護予防プログラムのRCT
移動能力に制限のある方に対する、サイバーダイン社のヘルスケアロボットHALの腰タイプを用いた5週間の運動プログラムの効果を検証したランダム化比較試験の論文です。
介入群では歩行速度を含む多くの身体機能指標が有意に改善し、HAL腰タイプを用いた短期間の運動プログラムが高齢者の身体機能改善に効果的である可能性が示唆されました。
タイトル:Efficacy of exercise with the hybrid assistive limb lumbar type on physical function in mobility-limited older adults: A 5-week randomized controlled trial.
著者:Yoshinobu Saito, Sho Nakamura, Takashi Kasukawa, Makoto Nagasawa, Yuko Oguma, Hiroto Narimatsu.
学術誌:Experimental Gerontology
時期: 2024 August 2 (online)
doi:10.1016/j.exger.2024.112536.
孤独感と血糖値の関連に関する横断研究
神奈川県みらい未病コホート研究で収集している孤独感(UCLA孤独感尺度)と血糖値(HbA1c)との関連に関する論文です。
今回の解析では、孤独感とHbA1cの間に関連は認められませんでした。この結果は欧米の先行研究と異なる結果であり、集団の特性や社会経済的背景が影響している可能性が示唆されました。
タイトル:The relationship between loneliness and blood glucose: a cross-sectional survey among Japanese.
著者:Quyen An Tran, Sho Nakamura, Kaname Watanabe, Choy-Lye Chei、 Hiroto Narimatsu.
学術誌:BMC Research Notes
時期: 2024 July 22;17(2):201.
doi:10.1186/s13104-024-06855-z.
COVID-19パンデミック下における心理的ストレスと余暇時間の運動/社会経済的状況の関連性
神奈川県みらい未病コホート研究の一環として、2020年12月から2021年3月にかけて1,573名を対象に、COVID-19パンデミック下における心理的ストレスと余暇時間の運動、および社会経済的状況との関連性を年齢層別に分析した結果が公開されました。
COVID-19パンデミック下の調査で、年齢層によって心理的ストレスの経験率と関連要因が異なることが判明しました。若年層では運動と収入、中年層では雇用形態、高齢層では教育と収入がストレスと関連し、40歳以上では同居者の存在がストレス軽減と関連していました。
タイトル:Age group differences in psychological distress and leisure-time exercise/socioeconomic status during the COVID-19 pandemic: a cross-sectional analysis during 2020 to 2021 of a cohort study in Japan.
著者:Yoshinobu Saito, Sho Nakamura, Kaname Watanabe, Hiromi Ikegami, Naoko Shinmura, Shinya Sato, Yohei Miyagi, Hiroto Narimatsu.
学術誌:Frontiers in Public Health
時期: 2023 October 25
doi:10.3389/fpubh.2023.1233942.
未病指標のコンセプト論文
神奈川県みらい未病コホート研究を活用して、神奈川県立がんセンター臨床研究所、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科が共同で実施した未病指標の精緻化事業に関連し、未病指標の成り立ちの経緯や未病のコンセプトをまとめた論文です。
未病指標がどのような健康や生活の質に関する項目に関係するかの解析に、神奈川県みらい未病コホート研究で収集した情報を活用することで、未病指標の正確性が高まったり、未病指標をヘルシーエイジングの取組に活かしたりすることが期待されます。
タイトル:The ME-BYO index: A development and validation project of a novel comprehensive health index.
著者:Sho Nakamura, Ryo Watanabe, Yoshinobu Saito, Kaname Watanabe, Ung-il Chung, Hiroto Narimatsu
学術誌:Frontiers in Public Health
時期: 2023 May 5;11:1142281.
doi: 10.3389/fpubh.2023.1142281.
プレスリリース(外部リンクに移動します)
コロナ禍における精神的ストレスの関連要因に関する研究
コロナ禍の2020年12月から2021年3月に研究にご協力いただいた1,573名(男性51.7%)を対象とした世代別の精神的ストレスに関する解析で、20~39歳の47.4%、40~64歳の40.6%、65~85歳の28.3%が精神的ストレスを経験しており、若年世代の約半数がストレスを抱えていたことが明らかになりました。若年世代は、余暇の運動時間と世帯年収の低さが精神的ストレスに影響していた一方、中高年世代では、配偶者など同居者の存在とストレス軽減との関連が示唆されました。コロナ渦のような様々な制約を受ける社会状況においては、世代の特徴や社会経済状況などを考慮した精神的健康への支援策が必要かもしれません。
タイトル:Age group differences in psychological distress and leisure-time exercise/socioeconomic status during the COVID-19 pandemic: a cross-sectional analysis during 2020 to 2021 of a cohort study in Japan
著者:Yoshinobu Saito, Sho Nakamura, Kaname Watanabe, Hiromi Ikegami, Naoko Shinmura, Shinya Sato, Yohei Miyagi, Hiroto Narimatsu
学術誌:Frontiers in Public Health
時期: 2023 Oct 25;11:1233942.
doi: 10.3389/fpubh.2023.1233942.
未病指標アプリ内の10メートル歩行速度計測の信頼性・妥当性を確認
タイトル:Evaluation of the validity and reliability of the 10-meter walk test using a smartphone application among Japanese older adults
著者:Yoshinobu Saito, Sho Nakamura, Ayumi Tanaka, Ryo Watanabe, Hiroto Narimatsu, and Ung-il Chung
学術誌:Frontiers in Sports and Active Living
時期: 2022 Oct 4;4:904924.
doi: 10.3389/fspor.2022.904924.
新型コロナ関連のスティグマ(差別や偏見)で心の健康や生活の質に及ぼす影響に関する研究
新型コロナウイルス感染症の流行初期など、特にワクチンや治療法が確立されていない状況下においては、感染者が直感的に感染症そのものと結びつけられて社会的な偏見を持たれたり、 差別を受けたりする「社会的スティグマ」が報告されています。本研究では、新型コロナウイルスに感染したことがない方を対象に、新型コロナに関連するスティグマがどの程度存在するのか、さらにスティグマが心の健康や生活の質にどの程度影響するのかを調査しました。その結果、感染を経験していない方々が有するスティグマが、心の健康や生活の質にマイナスの影響を及ぼしていたこと、また、70 歳以上の層でその傾向がより強いことがわかりました。今後新たな感染症が流行した場合には、心の健康や生活の質の確保するため、ターゲットを明確にしたメッセージなど、感染の有無に関係なくスティグマを低減する取組を考える必要性が示唆されました。
タイトル:COVID-19-related stigma and its relationship with mental wellbeing: A cross-sectional analysis of a cohort study in Japan
著者:Emiko Sawaguchi, Sho Nakamura, Kaname Watanabe, Kanami Tsuno, Hiromi Ikegami, Naoko Shinmura, Yoshinobu Saito, Hiroto Narimatsu
学術誌:Frontiers in Public Health
時期: 2022 Sep 29;10:1010720.
doi: 10.3389/fpubh.2022.1010720.
プレスリリース(外部リンクに移動します)
日本語版Mini-Cogスマートフォンアプリケーションの信頼性・妥当性を確認
神奈川県の委託を受けて実施した「未病指標の精緻化等に関する実証事業」における研究成果です。未病指標では、認知機能を測定するために対面式調査であるMini-Cog をスマートフォンアプリケーション上に表現し、自身で測定ができるツールとして提供しています。そのため本研究では、65~85歳の男女各20名に調査の協力を得て、アプリケーションによる測定方法の妥当性・信頼性を検証しました。その結果、再テスト信頼性は臨床上期待される値よりも低くなりましたが、専⾨スタッフによる対面での測定⽅法との基準関連妥当性は、許容できる正の関連を認めました。未病指標アプリケーションのMini-Cog評価は、多くの住民の皆様が健康行動を維持・改善していくきっかけとして十分活用できるツールであることが確認できました。
タイトル:Checking the validity and reliability of the Japanese version of the Mini-Cog using a smartphone application
著者:Yoshinobu Saito, Sho Nakamura, Ayumi Tanaka, Ryo Watanabe, Hiroto Narimatsu, and Ung-il Chung
学術誌:BMC Reseach Notes
時期: 2022 Jun 25;15(1):222.
doi: 10.1186/s13104-022-06101-4.
学会発表
2022年度
回帰木分析を用いたロコモティブシンドロームと腸内細菌との関連解析
発表者:西山未南、中村翔、松木大造、成松宏人
学会:第81回日本公衆衛生学会総会.口演.
時期・場所:令和4年10月7‐9日・甲府─ハイブリッド開催
Evaluation of gut microbiome by data envelopment analysis (DEA) in the ME-BYO cohort
発表者:Taizo Matsuki, Sho Nakamura, Minami Nishiyama, Hiroto Narimatsu
学会:第81回日本公衆衛生学会総会.口演.
時期・場所:令和4年10月7‐9日・甲府─ハイブリッド開催
2020年度
Quality of life関連指標とME-BYO indexとの関連
発表者:中村翔,齋藤義信,成松宏人
学会:第31回日本疫学会学術総会.オンデマンド口演
時期・場所:令和3年1月27‐29日・佐賀─オンライン開催
低血糖と抑うつ状態の関連
発表者:田中琴音,中村翔,中島啓,成松宏人
学会:第31回日本疫学会学術総会.オンデマンド口演
時期・場所:令和3年1月27‐29日・佐賀─オンライン開催
HAL腰タイプを使用した運動プログラムがフレイル状態にある高齢者の運動Self efficacyへ与える影響について
発表者:長澤誠,中村翔,小熊祐子,齋藤義信,粕川隆士,成松宏人
学会:第8回日本支援工学理学療法学会学術大会 口述
時期・場所:令和2年11月13日J-MICC STUDY全体の成果日・埼玉─オンライン開催
ヘルスケアロボットHALの運動プログラムが身体活動・身体機能に与える影響について
発表者:市原青葉,小熊祐子,齋藤義信,成松宏人,中村翔,粕川隆士
学会:第79回日本公衆衛生学会総会.一般演題(示説)
時期・場所:令和2年10月20日・京都─オンライン開催
関連研究の成果
論文発表
包絡分析法を活用した高血圧の一次予防を目的としたランダム化比較試験:わらわら予防高血圧プロジェクト
特定非営利活動法人地球健康プラン(理事長・成松宏人、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科教授)が山形県高畠町、公立高畠病院と共同で行った高血圧の一次予防を目的とした介入研究に関する研究成果が学術誌に掲載されました。これまで、成松・中村研究室で科学的なエビデンスを構築してきた包絡分析法(DEA)を高畠町の特定健康診査と組み合わせて、地域での高血圧の発症予防を試みた研究です。結果としては、手紙によるリスクの通知という、軽度の介入では高血圧の予防は達成できませんでした。一方で、包絡分析法による将来の高血圧発症リスクの可視化に関するエビデンスをより確かなものにすることができました。
タイトル:Effectiveness of a targeted primary preventive intervention in a high-risk group identified using an efficiency score from data envelopment analysis: a randomised controlled trial of local residents in Japan.
著者:Nakamura S, Kanda S, Endo H, Yamada E, Kido M, Sato S, Ogawa I, Inoue R, Togashi M, Izumiya K, Narimatsu H.
学術誌:BMJ Open.
時期:2023 May 16;13(5):e070187.
doi: 10.1136/bmjopen-2022-070187
特定保健指導への追加指導の効果を検証:たかはた元気プロジェクト
特定非営利活動法人地球健康プラン(理事長・成松宏人、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科教授)が山形県高畠町と共同で行った予防医療プログラムの有効性に関する研究成果が学術誌に掲載されました。この研究は、平成21年度から3年連続でメタボ該当者及び予備軍の割合が山形県内でワースト1位だった高畠町のメタボ率減少を目指して行ったもの。成松教授は同町の現状に合わせ、心疾患や脳卒中など、健康に多大な影響を与える可能性の高い疾患のハイリスク集団への介入を行う予防医療プログラム(医師による講演やグループワークなど)を作成。通常の特定健診の受診者のうち、ハイリスク集団についてはこの予防医療プログラムを追加して保健指導を行い、介入群と対照群でBMIの変化を検証しました。その結果、目標としたBMI改善は介入後1年後では得られなかったものの、3年後には介入群が27.0→26.4、対照群が27.5→27.4となり有意差が認められ、医療費も対照群の方が多くかかっていたことが明らかになりました。
タイトル:Efficacy of Additional Intervention to the Specific Health Guidance in Japan: The Takahata GENKI Project.
著者:Enomoto N, Nakamura S, Kanda S, Endo H, Yamada E, Kobayashi S, Kido M, Inoue R, Shimakura J, Narimatsu H.
学術誌:Risk Management and Healthcare Policy
時期:2021 Sep 21;14:3935-3943.
doi: 10.2147/RMHP.S323444
「ふじさわプラス・テン」の5年間の活動成果報告
未病指標を担当する齋藤義信研究員が藤沢市で進めている身体活動促進プロジェクト「ふじさわプラス・テン」の5年間の成果です。多機関との共同で、市全体に多面的な介入(情報提供、様々な機会を捉えた講座やイベント、運動グループの醸成など)を実施したことが特徴です。これらの取り組みの結果、主要なターゲットとして設定した高齢者において、市民レベルでの身体活動量増加(就労世代と比較した変化差で約15分/日)が認められました。
タイトル:A community-wide intervention to promote physical activity: A five-year quasi-experimental study
著者:Yoshinobu Saito, Ayumi Tanaka, Takayuki Tajima, Tomoya Ito, Yoko Aihara, Kaoko Nakaono, Masamitsu Kamada, Shigeru Inoue, Motohiko Miyachi, I-Min Lee, Yuko Oguma
学術誌:Preventive Medicine
時期:2021 Sep;150:106708.
doi.org/10.1016/j.ypmed.2021.106708
神奈川県みらい未病コホート研究における追加研究の成果
神奈川県みらい未病コホート研究では、付随する追加研究を実施しています。これらの成果を以下にご紹介します。
・Kobayashi S, Koizume S, Takahashi T, Ueno M, Oishi R, Nagashima S, Sano Y, Fukushima T, Tezuka S, Morimoto M, Nakamura S, Narimatsu H, Ruf W, Miyagi Y. Tissue factor and its procoagulant activity on cancer-associated thromboembolism in pancreatic cancer. Cancer Sci. 2021 Nov;112(11):4679-4691. doi: 10.1111/cas.15106
J-MICC研究全体の成果
論文発表
J-MICC Studyの研究概要に関する論文
タイトル:Study profile of the Japan Multi-institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study
著者:Takeuchi K, Naito M, Kawai S, Tsukamoto M, Kadomatsu Y, Kubo Y, Okada R, Nagayoshi M, Tamura T, Hishida A, Nakatochi M, Sasakabe T, Hashimoto S, Eguchi H, Momozawa Y, Ikezaki H, Murata M, Furusyo N, Tanaka K, Hara M, Nishida Y, Matsuo K, Ito H, Oze I, Mikami H, Nakamura Y, Kusakabe M, Takezaki T, Ibusuki R, Shimoshikiryo I, Suzuki S, Nishiyama T, Watanabe M, Koyama T, Ozaki E, Watanabe I, Kuriki K, Kita Y, Ueshima H, Matsui K, Arisawa K, Uemura H, Katsuura-Kamano S, Nakamura S, Narimatsu H, Hamajima N, Tanaka H, Wakai K.
学術誌:Journal of Epidemiology
時期:2021 Dec 5;31(12):660-668.
doi: 10.2188/jea.JE20200147
J-MICC研究の各リクルートサイトの成果
論文発表
タイトル:Effects of gene–lifestyle interactions on obesity based on a multi-locus risk score: A cross-sectional analysis.
著者:Nakamura S, Fang X, Saito Y, Narimatsu H, Ota A, Ikezaki H, Shimanoe C, Tanaka K, Kubo Y, Tsukamoto M, Tamura T, Hishida A, Oze I, Koyanagi Y.N, Nakamura Y, Kusakabe M, Takezaki T, Nishimoto D, Suzuki S, Otani T, Kuriyama N, Matsui D, Kuriki K, Kadota A, Nakamura Y, Arisawa K, Katsuura-Kamano S, Nakatochi M, Momozawa Y, Kubo M, Takeuchi K, Wakai K.
学術誌:PLOS ONE
時期:2023 Feb 8;18(2): e0279169.
doi: 10.1371/journal.pone.0279169
J-MICC Plusに、より詳細な解説が掲載されています(外部リンク)
J-MICC研究に関連する共同研究の成果
論文発表
タイトル:Blood Lipids and the Risk of Colorectal Cancer: Mendelian Randomization Analyses in the Japanese Consortium of Genetic Epidemiology Studies.
著者:Iwagami M, Goto A, Katagiri R, Sutoh Y, Koyanagi YN, Nakatochi M, Nakano S, Hanyuda A, Narita A, Shimizu A, Tanno K, Hozawa A, Kinoshita K, Oze I, Ito H, Yamaji T, Sawada N, Nakamura Y, Nakamura S, Kuriki K, Suzuki S, Hishida A, Kasugai Y, Imoto I, Suzuki M, Momozawa Y, Takeuchi K, Yamamoto M, Sasaki M, Matsuo K, Tsugane S, Wakai K, Iwasaki M.
学術誌:Cancer Prevention Research
時期:2022 Dec 1;15(12):827-836.
doi: 10.1158/1940-6207.CAPR-22-0146
タイトル:Association of 25-hydroxyvitamin D with risk of overall , colorectal cancer among Japanese using A Mendelian randomization approach.
著者:Katagiri R, Goto A, Nakano S, Nakatochi M, Koyanagi YN, Iwagami M, Hanyuda A, Yamaji T, Sawada N, Nakamura Y, Nakamura S, Kuriki K, Suzuki S, Imoto I, Momozawa Y, Oze I, Ito H, Tsugane S, Wakai K, Matsuo K, Iwasaki M.
学術誌:Scientific Reports
時期:2023 Feb 10;13(1):2384.
doi: 10.1038/s41598-023-29596-8