Q7:未病改善に役立つ「コホート研究」とはどんなもの?
がんに関する統計データをまとめた『がんの統計<2023年版>』によると、日本人の2人に1人ががんに罹患し、男性はおおよそ4人に1人、女性は同6人に1人ががんで死亡すると推定されています。今や、病気の予防や未病改善を考える上で、がんは避けては通れない課題と言えるでしょう。
がんを予防するためには、その原因になる環境要因(生活習慣など)と遺伝要因(体質)の関係から解き明かす必要があります。そのための土台となる基礎的な研究が「コホート研究」です。
コホートとはあまり耳慣れない言葉ですが、一体どんな意味なのでしょうか。コホート(cohort)とは、「集団」のこと。例えば同じ地域に住む住民など、一定の条件を持つ「集団」に属する人びとの健康状態を長期間に渡って追跡して、病気の発生や健康状態の変化などを調べていく研究を「コホート研究」と言います。
具体的には、調査した時点で、病気の要因であることが予想される要因(例えば、喫煙歴や肥満など)を持つ集団と、その要因を持たない集団を追跡し、両方の集団の病気の罹患率や死亡率などを比較していきます。その結果、どのような要因を持つ人びとがどのような病気に罹りやすいか、また死亡率が高いのかなどを解明し、病気の予防に繋げることが大きな目的です。
世界的に有名なコホート研究には、1984年に始まった米国ボストン州フラミンガムの住民を対象としたフラミンガム研究があります。継続的なフォローアップ健診などを通して、喫煙、高血圧、コレステロール値など心血管疾患の危険因子の特定に貢献し、コホート研究の原点とも位置付けられています。
監修:成松宏人 文:一般社団法人ハイジアコミュニケーション